女の子のワンちゃんを飼っている人は、一度は聞いたことがあると思われる言葉「避妊手術をしておかないと、乳がんになっちゃうよ」。
女の子のワンちゃんがいると、この言葉で避妊手術をすべきかどうか、かなり悩まれるのではないでしょうか。
そこで、今回は女の子のワンちゃんのいる飼い主さんのために「避妊手術をしないと乳がんになる」という説は本当なのかどうか、調べてみました!
目次
獣医師などがワンちゃんの避妊手術・去勢手術を勧めるワケ
子犬を初めて獣医さんに連れていき、その獣医さんがかかりつけになると、ある日「避妊手術・去勢手術」のお話をされるかもしれません。
その際に、「将来的にいろいろな病気になるリスクを下げることができる」というお話をされるかと思いますが、「乳がんになる確率を下げる」とは言われないと思います。
それでは、避妊手術・去勢手術をしないでおくと、どのような病気のリスクが高まるのでしょうか?
ワンちゃんの避妊手術によって予防できる病気とは?
女の子のワンちゃんに避妊手術をすることによって予防できる病気とは、どのようなものがあるのでしょうか?ここでチェックしてみましょう。
乳腺腫瘍
実は、女の子のワンちゃんに避妊手術をしておくと乳がんにならない、というのは、「乳腺腫瘍を発症しにくくなる」ということだと考えられます。
実際に発情期を3回経験する前のワンちゃんであれば、避妊手術をしておくだけで95%以上の確率で乳腺腫瘍が発生しないということがわかっているそうです。
それ以上の発情期を迎えてしまったワンちゃんにも、できるだけ早い時期で避妊手術をしてあげるのが良いとされています。
というのも、なぜか発情期の回数が増えれば増えるほど、乳腺腫瘍の発症率が高まるからなのです。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、避妊手術をしていれば完全にならないのですが、避妊手術をしていない女の子のワンちゃんの場合、5歳以降から発症率が高まります。
放置してしまうと死につながり、また発見が遅れると治療費も膨れ上がるといわれている病気です。
ワンちゃんの去勢手術によって予防できる病気とは?
男の子のワンちゃんについても、去勢手術によって予防できる病気があったのでご紹介しておきますね!
精巣腫瘍
精巣腫瘍は、精巣が体内の中に隠れてしまっている男のワンちゃんに発症しやすい病気です。
しかも、お腹の中のどこかに温められていると、腫瘍化しやすくなるとのこと。
4歳くらいから腫瘍になる確率が上がるらしいので、男の子はまずお医者さんでチェックしてもらって、万が一の場合には去勢手術をお願いしてしまったほうが安心ですね。
会陰ヘルニア
男性ホルモンの影響でなりやすいのが、会陰ヘルニアです。
去勢手術を受けていないワンちゃんによくみられる病気で、しっぽの付け根にある筋肉が薄くなり穴が開いて、そこから腸や膀胱が出てしまうのだとか。
症状は排尿障害で、手術によって治療しますが費用も高額で再発率も高い病気です。
前立腺肥大
去勢手術をしていないワンちゃんが年を取ると発症する率が高くなる、前立腺肥大。
初めは無症状でも、徐々に前立腺が大きくなることで臓器を圧迫しオシッコが出にくくなったり、トイレには頻繁に行くのに尿の量はかなり少なかったりといったことが考えられます。
さらに前立腺肥大が進行すると、前立腺組織内部に嚢胞ができ、血のような分泌物が出てくるようになります。
もちろん、オシッコが完全にできなくなると、命の危険もあるので、異常が見られたらお医者さんにかかりましょう。
肛門周囲腺腫
男の子のワンちゃんに発症する、かなりの頻度で発症する腫瘍が肛門周囲腺腫です。
特に男性ホルモンの影響を強く受ける病気なので、発症するワンちゃんの多くは去勢を受けていない子が多いのも特徴の一つ。
手術で切除するのが、一般的な治療法です。
ワンちゃんの乳腺腫瘍について詳しく知りたい!
避妊手術をしていない女の子のワンちゃんはガンになるということは、乳腺腫瘍が悪性になるから…、と考えられますよね。
そこでここでは、徹底的にワンちゃんの乳腺腫瘍について調べてみました。
乳腺腫瘍っていったい何?
乳腺腫瘍は、乳腺の組織の一部に腫瘍ができ、しこりとしてあらわれてくる病気です。
しこりがまだ小さいうちに手術で取り除いてしまえば安心の場合が多いのですが、大きくなると悪性腫瘍になってしまうことも。
とはいえ、腫瘍によっては悪性度の高いもの、進行の早いものなどさまざまありますので、まずは専門医を受診しましょう。
乳腺腫瘍は防げるって本当?
乳腺腫瘍は女性ホルモンの影響を受けて変異し、腫瘍化することが多いため、小さいころに避妊手術をしてしまうと乳腺腫瘍のリスクを下げることができます。
実際のところ、避妊手術をしていない女の子のワンちゃんでは、だいたい4頭に1頭の割合で乳腺腫瘍が発症するといわれています。
しかし、1度も発情期を迎えることなく避妊手術を受けておくと、乳腺腫瘍にかかるリスクはなんと0.5%くらいに抑えることができるのだそうです。
乳腺腫瘍はガンの可能性が高いの?
乳腺腫瘍がすべてガンになるわけではなく、実はワンちゃんの場合は悪性のもの、命のリスクがあるものは全体の25%程度といわれています。
悪性のものか良性のものかを判断する方法としては、腫瘍の組織を病理組織検査にかけ確定診断を出すこととなっています。
触診では、1㎝以下の腫瘍であれば良性で手術で摘出してしまえば完治可能といわれ、3㎝以上の腫瘍になるとガン化しているリスクが高くなります。
また、悪性腫瘍の場合には、腫瘍が大きくなる速度が速くなるので、もし飼い主さんがしこりに気づいていて、どんどんしこりが大きくなってきているとわかったら、すぐに獣医さんを受診し、しこりの肥大化する速度が心配と伝えましょう。
悪性の乳腺腫瘍では、リンパや肺に転移している可能性もあるため、なるべく早い治療が必要となります。
一般的に、乳腺腫瘍は良性でも悪性でも、手術で切除をするのが一般的です。
乳腺腫瘍の生存率は?
人間では乳がんだった場合、5年生存率が何パーセントかなどが気になりますよね。
ワンちゃんの乳腺腫瘍の場合、1cm未満の腫瘍では手術で切除してしまえば、100%が長期生存といわれています。
ところが、腫瘍が1~3㎝になってくると8割弱の完治、3㎝以上になってしまうと6割弱と、どんどん命のリスクが高くなることがわかります。
ワンちゃんの乳腺腫瘍、再発の心配はすべき?
ワンちゃんの乳腺は人間のものと比べると10個と多いので、乳腺腫瘍を摘出した後、しばらくするとまた腫瘍を見つけることがあります。
再発率も、やはり避妊手術を受けていな女の子のワンちゃんのほうが6割強と高いことがわかっています。
ワンちゃんの乳腺腫瘍の入院と治療費について
ワンちゃんの乳腺腫瘍の手術では、全身麻酔で行うことが一般的のため最低でも1泊の入院が必要といわれています。
また、広範囲の乳腺を切除した場合は、痛みのケアなどもあるためさらに1日鎮痛のための入院が必要となります。
ワンちゃんの乳腺腫瘍の治療費は、その乳腺の手術の難易度などによっても変わってくるため一概には言えませんが、早期の乳腺腫瘍の手術で10万円くらい見ておくとよいかもしれません。
術後は、3か月おきに定期検診で再発や転移がないかをチェックして行くこととなります。
万が一ガンだった場合には、術後も抗がん剤治療、放射線治療などを考えていくこととなります。
子宮蓄膿症について詳しく知りたい!
避妊手術をしていないワンちゃんがよく発症する病気として、乳腺腫瘍意外に子宮蓄膿症が挙げられます。
女の子のワンちゃんがいらっしゃるご家庭は、子宮蓄膿症がどんな病気で、どのような治療が必要となるのかなどをここでチェックしてみましょう。
子宮蓄膿症っていったい何?
子宮蓄膿症は、子宮に膿が溜まってしまう病気で、治療法としては手術をして膿ごと子宮を切除します。
子宮に膿が溜まってしまうだけですが、そのまま放置してしまうと死にいたりますので、注意が必要です。
避妊手術をしていない女の子のワンちゃんの発症率が15%程度といわれており、さらに出産経験のないワンちゃんのほうが、出産経験のあるワンちゃんよりも発症リスクが高いということがわかっています。
5歳以降からの発症が高まりますので、なるべくワンちゃんが若く元気な時に避妊手術をしてあげるのが良いといわれています。
子宮蓄膿症を発症するとどうなるの?
子宮蓄膿症を発症すると、食欲が落ち、代わりに水を多く飲むようになるようです。
尿の回数も多くなります。
また、ワンちゃんの体は発熱し、子宮は膿で膨らんでいる状態になっています。
治療としては、全身麻酔で子宮を全摘出します。
子宮蓄膿症の入院日数目安と手術費について
子宮蓄膿症で入院となった場合、どのくらいの入院で、手術なども含めどのくらいの予算が必要となるのでしょうか。
もちろん、子宮蓄膿症の進行具合や動物病院の地域などによっても変わってきますが、子宮蓄膿症の入院の場合は、大体4-5日程度で、退院することができるといわれています。
入院費もかかるので、全体で15~20万円用意しておいたほうが安心ですね。
術後1週間くらいは食欲も落ちますし、心配になるかもしれませんが、徐々に元気になってくるでしょう。
万が一1週間たっても辛そうな様子が続いたら、再度動物病院を受診しましょう!
避妊手術のメリット・デメリットが知りたい!
女の子のワンちゃんに避妊手術をした場合のメリットとデメリットを、チェックしておきましょう!
<避妊手術のメリット>
乳腺腫瘍・子宮蓄膿症といった病気のリスクを下げることができる。
卵巣関連の病気の予防ができる。
発情期がなくなるので穏やかに過ごすことができる。
万が一家から脱走してしまった時など、妊娠の心配がなくなる。
避妊手術をすることで病気の予防・進行防止に役立ち、結果として寿命を延ばす効果が期待できる。
<避妊手術のデメリット>
避妊手術後は太りやすくなる。
避妊手術後に失禁や尿漏れが出てしまう子もいる。
ホルモンが出なくなることで、皮膚トラブルが発生する可能性もある。
手術が全身麻酔のため、その点のリスクがある。
避妊・去勢手術の後は太るって本当?
実は、避妊・去勢手術をすると、ホルモンに影響を及ぼし食欲が増すことがわかっています。
そのため、欲しがるだけ食べ物を与えてしまうと、肥満気味になってしまう可能性があります。
避妊・去勢手術後のカロリーコントロールは、飼い主さんがしっかり行い、さらに散歩など体を動かすよう心掛けてあげることで、去勢手術後の肥満はある程度防ぐことができるでしょう。
終わりに
「避妊手術をしないと乳がんになる」という言葉は、実は「避妊手術をしないと乳腺腫瘍になる可能性が高まる」という言葉で、乳腺腫瘍は悪性のものがあり、それを乳がんと呼んでいることがわかりました。
また、避妊手術・去勢手術は若いうちに済ますことで、効果的にいくつかの病気の予防になることもわかりましたね。
できれば避妊手術・去勢手術ともにできるだけ若いうちに、5歳までには手術することをこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。
1年でも長く一緒にいたいですもんね!