心臓弁膜症とは、犬がかかってしまう心臓病のなかで、一番多い病気といわれています。
どんな症状なのか、どのように進行していくのか、治療法や防ぐ方法があるのかなど、飼主様の気になる情報をお伝えしたいと思います。
どんな病気?
弁膜症は、僧帽弁閉鎖不全症と言われる病気です。
心臓の中にある4つの弁僧房弁が加齢などが原因で閉鎖不全と呼ばれる、閉まらなくなる状態や、狭窄と呼ばれる狭くなる疾患を言い、犬が発症しやすい病気が僧房弁閉鎖不全症と呼ばれる弁膜症です。
犬の心臓も人と同じで、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があり、右心房と左心房は汚れた血液を肺に送る働きをし、左心房と左心室は、きれいになった血液を肺から受け取り全身に送る働きをしています。
その心臓の中で、左心房から左心室の部屋を区切るためにある弁が異常を起こす状態を、僧帽弁閉鎖不全症と言われています。
弁は二枚で扉のような役割を担っていて、左心房から左心室に向かってのみ開くようになっています。
これは、左心房から左心室に送られた血液が逆流しないための仕組みです。
この僧帽弁がきちんと機能をしなくなってしまうと、血液の逆流が起きて身体に送るきれいな血液の量が減ってしまい、心臓は綺麗な血液を送り出すために必死に働き始めてしまいます。
症状が軽いころは外見上に変化はあまり見られず、身体の中でだけ心拍数があがったり心臓に雑音が入り始めます。
定期健診などの聴診器ですぐに発見される事が多いので、7歳を過ぎだしたら年に一度は病院でチェックをしてもらうようにしたいです。
病気に気付かず症状が進行していくと、どうなるのでしょうか。
心臓は常に必要以上に働いてきれいな血液を身体に送ろうとがんばりますので、休まる時がありません。
そのため心臓は疲労困憊状態になります。
そうなると心臓の動く力が弱くなり、心臓の中から血液が出て行かなくなります。
そのため、心臓に血液がたまってしまいます。
僧帽弁閉鎖不全症は、よく「心臓が大きくなっています」と、一緒に言われることがあります。
これが、血液が心臓にたまり膨らんだ状態の事を言います。
心臓にたまってしまった血液は、肺に流れていきます。
はじめのころは肺の中にある毛細血管に流れてたまりますが、その毛細血管にも限界が来ます。
毛細血管からあふれた血液は徐々に肺の中にたまっていき、肺水腫と呼ばれる状態になります。
肺の中に血液があふれ、肺組織が呼吸をうまく出来なくなってしまいます。
この毛細血管から血液があふれる状態が胸で起これば胸水、お腹で起こると腹水と言います。
弁膜症は、放置するとそのまま死に繋がる病気です。
初期のころはシニア犬にはよくある、寝ている時間が長い、散歩の途中で座り込む、たまにハァハァと息が上がる、と言った程度ですが、徐々に咳が出始め食欲が落ちてきます。
何もしていないのに咳が出たり、突然倒れたり、呼吸困難をおこしたりと言った症状が出てくると症状はかなり進行してしまっています。
酸素が体に行きわたりにくくなり酸素濃度が下がると、チアノーゼと呼ばれる舌などが紫色になる症状が起きることもあります。
心臓が常にフル活動をしているため、体力が続かなくなり限界を迎えてしまうことになります。
そうなる前に、初期の段階で適切な治療を開始することが大切です。
治療法は?
薬で治療
僧帽弁閉鎖不全症の治療は、多くは投薬の治療になります。
・ACE阻害薬
血管を広げることで心臓の負担を軽くする薬です。
血圧を下げて低血圧のような状態にして、激しく働こうとする心臓の動きをゆっくりに抑える働きを持ちます。
心臓病の初期はほとんどがこのお薬から開始されます。
・強心薬
ACE阻害薬とは逆の働きを持つお薬です。
働く力が緩くなってきた心臓の収縮させる筋肉に働きかけ、しっかりと働かせます。
ACE阻害薬から始めて、そこから悪化してきたときに使用されます。
飲み始めると、止めることなくずっと飲むことを支持されるお薬です。
・利尿薬
心臓に利尿作用?と思われるかもしれませんが、腎臓に過剰にたまった体液を取り除き尿を出すことで、身体の中の血液量を減らす役割をさせます。
血液量が減ると、心臓への負担を減らせます。
また、肺水腫を防ぐ効果もあります。
・β部ロッカー
不整脈を抑えるお薬です。
興奮は心臓に負担をかけますので、興奮しないように自律神経に働きかけるβ遮断薬と呼ばれるお薬や、心臓の筋肉が通常以上に使われることで収縮し、血管が細くなるのを防ぐために細胞が興奮しないように抑えるお薬などがあります。
・血管拡張薬
細くなった血管を広げて心臓の負担を減らし、血圧を下げるためのお薬です。
外科手術で治療
最近では外科手術を行う病院も徐々に増えてきています。
開心手術となり、心臓を止め人工心肺を用いての本格的な手術となりますが、術後は完治が見込まれます。
十分な設備と医師の手腕が必要な手術であるため、どこの病院でもできると言う手術ではありません。
麻酔も必要ですので、高齢になると手術自体が受けられない可能性もあります。
リスクや費用も高くなりますので、信頼のできる病院を探すことが何より必要となります。
弁膜症を防ぐには
ワクチンを接種する事や投薬をすることで必ず防げると言った類の病気ではありませんので、絶対にかからないと言う予防法はありません。
心臓弁膜症は、もともとの体質でかかりやすい犬種と言うものがあります。
日本でも多い小型犬のトイ種の犬種が多くかかりやすいといわれています。
マルチーズやヨークシャテリア、トイプードル、チワワ、ポメラニアン、ミニチュアダックスフンド、そしてキャバリアといった犬種に多くみられます。
先天性で持って生まれた子や、加齢に伴って発症します。
できるだけ、心臓弁膜症を防ぐ食生活や日常生活が必要です。
太らせない
肥満は心臓に負担をかけるため、心臓病の天敵です。
太り過ぎは心臓だけではなく足腰やほかの臓器にも負担をかけます。
丸くてコロコロとした子はとても愛らしく見えますが、身体のためには太らせないようにしましょう。
塩分を控える
心臓の負担の原因に塩分が上げられます。
犬たちは人間のように汗を流しません。
足裏の肉球から汗をじわじわと出す程度のため、人のように線分を体外に胚珠する量が少ないため体内に塩分が溜まりやすくなっています。
塩分を多くとりすぎると体内の塩分濃度もあがります。
すると、身体の中の塩分濃度を下げるために水を沢山取り込もうとし、更にその水分を逃さないよう尿の量が減ってしまいます。
そうなると、体内の水分や毒素が体外に排出されにくくなります。
血液は体の中の水分に含まれていますので、血液の量が増えてしまいます。
血液の量が増えると心臓は沢山動かして血液を身体に送ろうとするため、結果的に血圧が上がり心臓に負担がかかっていきます。
塩分の過剰摂取は愛犬の身体に大きな影響を与えます。
不要な塩分を与えることは止めましょう。
最後に
人と同じで生活習慣が乱れて太り気味や塩分過多となると、心臓病を引き起こしやすくなります。
そして、これをすれば絶対に病気にかからない、と言った予防法はありません。
けれど、肥満や塩分の取りすぎが心臓病を引き起こす大きなリスクとなっています。
飼主様のご飯を欲しがったり、同じようにおやつを食べたがったりすると、ついついあげてしまいたくなりますが、人の食べ物は当然塩分も糖分も犬たちには多すぎますので与えないようにしましょう。
心臓の病気は、はじめは目に見えず緩やかに静かに進行していきます。
症状が出始めたころにはすでに初期段階ではなくなっていることも多いため、元気な子でも最低でも一年に一度は獣医さんで検診を受けるようにしましょう。
心臓弁膜症と言われたら、すぐに獣医さんと今後のことを相談してください。
最近の薬は優秀で、初期からお薬を始めれば、そこからまた長く一緒にいられることが多いので、諦めずに治療を開始しましょう。