うちのワンコは発達障害?気になるワンちゃんの障害

最近、「発達障害」という言葉をよく耳にするようになりましたよね。
子供の発達が心配という方や、就職してから発達障害に気づく方もいらっしゃるようです。
そんな中、ワンちゃんを飼っている方は「犬にも発達障害ってあるの?」と疑問に思われたことがあるのではないでしょうか?

そこで、ワンちゃんにも発達障害というものがあるのかどうか、調べてみました!
「うちの子、発達障害みたいな行動を取っているんだけれど、犬だから発達障害はないのかな?」とお悩みの飼い主さんは、ぜひ目を通されてみてくださいね!

ワンちゃんにも発達障害は「ある」!

「まさか、犬に発達障害なんて…!」と思われた方。
結果からお伝えしてしまうと、ワンちゃんにも発達障害は「あります」
逆に、今まで自分の家のワンちゃんが他の家のワンちゃんとちょっと違うと思われていた方、育てにくさを感じていた方は、やっぱりなあと腑に落ちるかもしれませんね?
そうなのです。

あの落ち着きのなさ!
1日中ずっと落ち着きがなくて、急にバタンキューとスイッチをオフしたみたいに静かになる姿を見てホッとしていた飼い主さん!

または、他のワンちゃんにまったく興味を持たず、なぜかこだわりの強い性格を持つワンちゃんの飼い主さん!
もしかしたら、それは発達障害のせいかもしれません。

ワンちゃんの発達障害の種類は?

ワンちゃんにも、人間と同じような発達障害の種類があります。
大きく分けると、
→ADHD(注意欠陥多動性障害)
→ASD(アスペルガー症候群)
→LD(学習障害)
の4つに分かれます。
それでは、それぞれの特徴を一つ一つ見ていってみましょう。

ADHD(注意欠陥多動性障害)って何?

ADHD(注意欠陥多動性障害)という言葉を聞いたことがある方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

人間の場合ですが、「診断される子どもの割合は学童期の子どもの3〜7%、男の子のほうが女の子より3-5倍多いと言われている。」
「成人でも診断に該当する人の割合は2.5%ですが、男女比は1:1に近づく。」
と、国立精神・神経医療研究センターのWEBサイトでは説明されていました。

人間で一定数みられるADHDですが、実はワンちゃんにも一定数存在するのだとか!
ADHDのワンちゃんは注意欠陥多動性という障害名通り、落ち着きがなくエネルギッシュで、注意力が散漫な様子が見られるそうです。

ADHDと診断されたワンちゃんは、獣医さんからADHD用のお薬を処方してもらえますよ。
投薬をすることで、困った行動を減らすことができるかもしれません。
特に飼い主さんがワンちゃんの多動などでお困りの場合は、病院を受診してみるとよいでしょう。

ASD(アスペルガー症候群)

人間の発達障害といえば、「アスペ」なんて言う言葉がよく聞かれますよね。
「アスペ」、いわゆるアスペルガー症候群は、ASDとも呼ばれ、日本自閉症協会によれば、データにより異なるそうですが、人口に対するASDスペクトラム症の方は、おおよそ20人~40人に1人(2.5%~5%)は存在する可能性が指摘されているそうです。

また、過去には男女比はおおよそ4:1と男性に多くみられると言われていましたが、実は女性のASDの方も症状が見分けにくいだけでそれなりの数がいられるのではといわれているそうです。
ワンちゃんにもASDの特徴がみられる子はいるようですが、ADHDほど多くはないといわれているようです。
とはいえ、他のワンちゃんと交流するのが苦手だったり、一つにものにすごい執着する様子が見られるワンちゃんはいるようで、その場合はASDの可能性が指摘されるそうです。
ASDには投薬治療などはないため、病院を受診してもどうにもならないというのが現状のようですね。

LD(学習障害)

「LD」という言葉を聞いたことがありますか?
例えば、アメリカのハリウッドで活躍する俳優さんの中にも、LD(学習障害)のせいで字の読み書きができない方などがいらっしゃったりしますよね。
厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、「学習障害(限局性学習症)」は、読み書き能力や計算力などの算数機能に関する、特異的な発達障害のひとつであり、字の読めない子、字を書けない子、算数ができない子の3タイプがあるそうです。
また、LDとADHDやASDと併発しているケースもあるそうです。

ワンちゃんは読み書きをするわけでも算数をするわけでもないので、LDと診断することはなかなか難しいと思います。
何度しつけようとしても、全然覚えてくれない…、などから「LDかな?」と思われても、
ただ物覚えが苦手な子というケースもありますしね。

ワンちゃんに見られるADHD!特徴の詳細は?

ワンちゃんに見られるADHDの特徴は、どんなものがあるのでしょうか?
ワンちゃんの発達障害の中で一番多いといわれているADHDについて、ここでは見ていってみましょう。

特徴① とにかく落ち着きがない!活発すぎる!

ADHDのワンちゃんの場合、一番飼い主さんを困らせるのが「落ち着きのなさ」です。
なんでも口に入れてしまうかと思ったら、家の中でも構わず走り回ってソファーに飛び乗ったり、ドッグランで他のワンちゃんを追いかけまわしたり、意味がない動きをしているように見えたら、ADHDかもしれません。

どんなに体を動かして遊ばせても、その後もずっと動き回っている過活動がみられる。
もちろん、子犬のころは落ち着きがないのは当たり前ですが、例えば2歳を過ぎてもなかなか落ち着かなかったら、一度掛かりつけの獣医さんに相談されてもよいかもしれませんね。

特徴② 集中力が全くない!

ワンちゃんに何かしつけようとしたり、一緒に遊んだりしようとしても、なぜか飼い主さんに集中するのが苦手な子がいます。
いろいろ工夫をしてしつけようとしても、ワンちゃんが集中するのが苦手なために、しつけができない、トレーニングが苦手、といった症状が出ます。
集中力がなく、飽きっぽいなと感じたら、ADHDを疑ってみてもよいかもしれませんね。

特徴③ 空気が読めない

人間同様、ワンちゃんもある程度空気を読んでいませんか?
例えば、人間同士が喧嘩をしていたら、そのピリピリした空気をワンちゃんって読みますよね?
他のワンちゃんと遊んでいるときも、なんとなく空気を読んでワンちゃんとかかわりあうのが、一般的なワンちゃんです。

ところが、ADHDの特徴のあるワンちゃんは、興奮してしまうあまりに遊んでいて強くかんでしまったり、嫌がっているワンちゃんをしつこく追いかけまわしてしまったりといった様子が見られます。

特徴④自咬症

ADHDを持っているワンちゃんは、興奮してしまう特徴があり、そのせいでうまく感情がコントロールできずに自分のしっぽや足を噛んでしまう子がいるそうです。
そんな様子が見られたら記録しておき、他の気になる症状とも合わせて掛かりつけの獣医さんを受診してみましょう。

ワンちゃんのASD!特徴の詳細は?

ワンちゃんのASDも、ある特徴がみられます。
ワンちゃんのASDの特徴を細かく見ていってみましょう。

特徴① 一人の世界が好き!コミュニケーションは苦手!

例えば散歩に出かけても他のワンちゃんに無反応であり、飼い主さんともコミュニケーションを取ろうとしない姿が見られたら、ASDかもしれません。
ドッグランなど他のワンちゃんとのびのび遊べる環境を与えても、一匹で外れている場合、また飼い主さんが遊ぼうとしてものってこない様子がたびたび見られるようであれば、ASDを疑ってみてもよいのかもしれませんね。

特徴➁ ワンちゃんの表情が読めない、感情表現をしない?

嬉しいとき、怒った時、寂しそうなとき、一般的にワンちゃんを見ていれば飼い主さんはワンちゃんの感情を行動から読み取ることができますよね。
こういった感情表現をする様子があまり見られない子は、ASDの可能性があるのかもしれません。

特徴③ 他の子よりも小さな音に敏感

もともとワンちゃんは音に敏感な子たちですが、ASDを持っているワンちゃんは、一般的なワンちゃんよりも音に敏感といわれています。
小さな音にびっくりして吠えている様子が見られたら、どんな音にびっくりしているのかしばらく観察してみてくださいね。
原因の排除できる音であれば、排除してあげたほうがワンちゃんも安心できますからね!

特徴④ 一つのことにこだわりを見せる!

ASDの特性としてよく見られるといわれているのが、「こだわり行動」です。
ワンちゃんがある特定のものや活動に強い関心を持ったり、繰り返し同じ行動をとることがあるそうです。
例えば、特定のオモチャに異常な執着を見せたり、同じ動作を何度も何度も繰り返すなど。
遊ぶときはこのオモチャ、と決まっていたり、散歩コースを変えるのを嫌がったりなどこだわりが見られたら、ASDの可能性があるかもしれません。

特徴⑤ 日常で見られるルーティンへの依存

ASDの特性の一つが、いつも行うルーティンに依存することです。
いつものルーティンが変わることを、嫌がります。
散歩の時間、ご飯の時間、いつもの繰り返しの行動が変わってしまうと、かなりストレスを感じてしまうのです。

発達障害なのかしつけ不足なのかを見極めるには?

発達障害の難しいところが、見た目で判断できないことですよね。
人間だって判断がグレーだったりするのに、ワンちゃんならなおのこと!

例えば、子犬の時期に社会性を十分に身に付けなくて、他のワンちゃんを嫌がっているのか、発達障害の特性で嫌がっているのかを見極めるのはなかなか難しいですよね。
経験不足で新しい環境や人、犬が苦手なだけかもしれません。
どんなに長い間一緒にいても、何年も一緒に暮らしているのに飼い主さんを怖がったり、自分からコミュニケーションを取ろうとしない姿が見られれば、ASDかな?といった見当はつきますけれど、家族は大好きだけれど他の人がダメ、であればASDの心配はなさそうです。

LDになると、飼い主さんや獣医さんでも判断ができにくいといわれています。
もともと運動音痴や、トレーニングが苦手な子がいるため、それがLDのためなのか、単にちょっとだけおっとりしている子なのか、わからないですよね。

発達障害の見極めのポイント

ワンちゃんたちの発達障害も、見極めるポイントがいくつかあります。
うちのワンコは発達障害かな?と思われる方は、下記のチェック項目を参考にしてみてください。

チェック① 子犬の時に社会を学ぶ機会があった?

ワンちゃんの場合、生後4か月くらいまでに社会を学ぶ必要があります。
たくさんのワンちゃんや人間と接することで、社会化ができるのです。
社会を学ぶと、ワンちゃんは衝動的な行動を見せることはあまりなく、元気に動き回っていても落ち着く姿も見られるそうです。

ところが、飼い主さんの都合で生後4か月までにワクチン接種をしていないからと外に出さなかったり、飼い主さんが忙しすぎて外の世界を十分に学ばせてあげていないと、社会化がしっかりできていなかった可能性があります。
うちの子はそうかもしれない?と思われたら、トレーナーさんを探してぜひ相談されてみてくださいね。

チェック② ワンちゃんの犬種によって警戒心が高いのかも?

例えば害獣駆除犬や牧羊犬、猟犬などは、本能的に警戒心が強いですよね。
もちろん、小さな刺激にもしっかり反応するように本能に組み込まれています。
そしてそういう子たちは、たっぷり体を動かしてあげないといけないということなのですね。

飼っている犬種がそういった役割を担っていた子たちであれば、散歩の時間や運動量に着目し、必要に応じて改善してあげると、ワンちゃんも落ち着いてくるかもしれません。

チェック③ ワンちゃんの飼育環境を再チェック!

例えば家族で暮らしていて、小さな子が周りにいる環境だったりしていませんか?
ワンちゃんがゆっくりしたいとき、落ち着きたいときに周りで子供たちが騒いでいる、なんてことはありませんか?
ケージに閉じ込めっぱなしだったり、ずっと鎖につながれている状態ではありませんか?
ワンちゃんが常にストレスを感じてしまう環境にいると、やはり精神的に落ち着けないですよね。

チェック④ 好きな遊びに集中できる?

ワンちゃんのトレーナーさんが、ワンちゃんの集中力をチェックするのに用いられるものが、クリッカーです。
クリッカートレーニングと呼ばれ、クリッカーを鳴らしてワンちゃんが反応するとオヤツが貰える、というシンプルな遊びです。
いつも落ち着きなく暴れまわっている子でも、オヤツが貰いたくてちゃんと反応できれば、発達障害の心配は少ないかもしれません。

見極めチェックをしても心配な場合はどうしたらいい?

ワンちゃんの発達障害の見極めチェックポイントを全部確認しても、なんだかモヤモヤするという方、やっぱり心配という方は、獣医さんに相談し、ADHDの診断などを受けてみるとよいでしょう。

投薬することで、ワンちゃんも飼い主さんも良い状態になることもありますし、投薬に抵抗のある方も獣医さんに訓練方法や問題行動への対処法を教えてもらうだけで問題行動が改善する場合もありますからね。

また、運動量も増やしてあげるとよいですね。
ストレスを溜めないよう運動、環境を整えてあげると、ワンちゃんの状態も良い方向に向かう可能性がありますよ!

終わりに

いかがでしたでしょうか?
うちのワンちゃん、絶対発達障害だよ!
と思われていた方、発達障害の見極めチェック項目で安心された方もいらっしゃるかもしれません。

逆に、やっぱり心配!となった方もいらっしゃるでしょう。
万が一、ワンちゃんに発達障害があったとしても、特性を理解してあげれば問題行動は減らすことができます。
心配な方は獣医さんに相談し、みんなでワンちゃんのことを考えてあげるようにするとよいですね。

【獣医師監修】犬にも発達障害がある?特徴や見分け方、対処法について解説します!

犬もADHDになる?発達障害を疑う前に確認したい項目と診断方法

ADHD(注意欠如・多動症) – 国立精神・神経医療研究センター

自閉スペクトラム症とは – 日本自閉症協会

学習障害(限局性学習症)

犬の発達障害チェック:症状とADHD多動性への理解