ワンちゃんでもなるガン!ならないようにするためには

ワンちゃんって、癌になるの?
なんて驚かれた方は、いらっしゃらないかもしれませんね。
長寿のワンちゃんが認知症を発症したりもするように、人間がかかる病気は残念ながらワンちゃんもかかることがあるのです。

けれど、何も知らないで不安に思うよりは、ガンを知って対策や万が一かかった場合のことを知っておけば、少しは安心できるのではないでしょうか。
ここでは、ワンちゃんのガンについてみていってみましょう。

ワンちゃんでもガンになる?!

ワンちゃんもガンになるということは、皆さんご存じかと思います。
ガンは細胞の異常増殖によって引き起こされる病気なのですが、実は日本のワンちゃんの死因ではトップなのだそう。
ワンちゃんの寿命が延びているため、癌にかかってしまう子が増えていると考えられているそう。
ガン細胞はワンちゃんの場合も人間同様、血管やリンパ管の中に入りこみ、体の中のあちらこちらに転移します。
もちろん、進行すると死に至ることが多い怖い病気です。

ワンちゃんがかかりやすいガンとは?!

ペット関連の医療技術が進み、ワンちゃんがガンと診断される件数も年々増えているようです。
そこで知っておきたいのが、ワンちゃんに多く見られるガンについて!
様々なガンから、ワンちゃんが診断されることの多い種類のガンをピックアップしてみました。

1.肥満細胞腫

日常的に多くの獣医さんが遭遇する腫瘍、といわれているのが、肥満細胞腫だそうです。
皮膚にできる腫瘍の20%を占めているともいわれているこちらは、基本的に転移性を持つ悪性腫瘍として診断されることが多いのだとか。
また皮膚だけでなく、皮下やお腹の中など、ワンちゃんの体の様々な部分に発生する腫瘍なのだそうです。

肥満細胞腫、何て呼ばれているので、太っているワンちゃんがかかりやすいのかと勘違いしてしまいそうですが、肥満細胞腫は肥満とは全く関係がないそう。
世界的に見てみると、肥満細胞腫にかかりやすいワンちゃんは、ボクサーやボストンテリア、パグ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、コッカースパニエル、シュナウザーなど。

ちなみに日本では、2019年の東大の論文によると、233例のワンちゃんが肥満細胞腫と診断されたたそうです。
どんなワンちゃんが肥満細胞腫を患ったのかといえば、ラブラドール・レトリーバー、雑種犬、パグだったそうですよ。
自分の家の子に、当てはまっていませんか?
また、柴犬にも多く発症するそうなので、柴犬を飼っている飼い主さんも気を付けてあげてくださいね。

<症状>
気になる症状ですが、腫瘍が小さいうちは無症状で、大きくなることで腫瘍に痛みが出たり、食欲不振による体重減少などが出てくるとのこと。

見た目は皮膚にできたものであれば、腫瘍の部分が盛り上がって赤くなり、その周囲の毛が抜けるそうなので、飼い主さんも目で見て気が付くことができます。
皮膚の症状なので、動物病院へ行く前にしばらく様子を見ようということになりそうですよね。
とはいえ、特にリスクの高い犬種のワンちゃんの場合は、気になる皮膚症状がみられたら、念のため動物病院を受診するとよいでしょう。

2.リンパ腫

リンパ腫という病気は、白血球のうちの1種のリンパ球が腫瘍となり増殖するガンです。
ワンちゃんのガンの種類の中では発生率が高いらしく、ワンちゃんの腫瘍全体の7-24%を占めているともいわれています。
年齢的にはすべての年齢層で見られるガンであり、特に多いのが5-10歳以上のワンちゃんだそうですよ。

リンパ腫が発生することの多い犬種は、ボクサーやゴールデン・レトリーバー、バッセトハウンドで、リスクが低い子はダックスフンドやポメラニアンだそうですよ。
リスクが低いからと言って、絶対かからないわけではないですけれどね。

リンパ腫が発生する原因はわかっていないそうですが、遺伝や発がん物質の摂取が考えられているそう。
血液のガンなので体内のいろいろなところに散ってしまうのが、リンパ腫の怖いところ。
そのため、ガンんが発生する場所の違いにより、症状や治療、予後が変わります。

<症状>
リンパ腫の場合、首や脇、股などのリンパ節が腫れるため、その部分が盛り上がってしこりのように触ることで、気づけることがあるそうです。
治療しないと4-6週間で死ぬリスクもあり、また治療も根治ではなく緩和ケアになるそう。
ワンちゃんも、化学療法、外科療法、放射線療法、食事療法といった人間と同じような治療をし、リンパ腫とうまく付き合っていくということになりそうですね。

3.血管肉腫

ワンちゃんの血管肉腫は、非常に悪性度が高いガンで、高確率で肺や全身に転移がみられるそうです。
脾臓によく発生し、そのため脾臓に発生する悪性腫瘍の45-50%と、半数近くが血管肉腫となるとのこと。
脾臓以外には、心臓の右心房、肝臓、皮膚、皮下織に発生し、血管肉腫が破裂して出血したり、癒着したりすることがよくあるそうです。
破裂して大出血すると、生死にかかわります。

<症状>
お腹の中にガンができてしまうと、初期はやはり気づきにくいですよね。
そのため、知らず知らずにガンが大きくなり、お腹の中で破裂してしまうことがあるそう。

症状は、できた器官によって異なり、嗜眠、食欲不振、体重減少、腹部膨満などの症状が出ることもあれば、健康診断で腫瘤が見つかるまで無症状で気づかないこともあります。

また心臓であれば、不整脈や呼吸困難、お腹に水が溜まるといった症状がみられることも。
治療は、外科手術でガンを摘出すること、また化学療法などが行われるそう。
予後は発症部位が脾臓で外科手術のみの場合、平均余命は19-86日、外科手術と化学療法の併用で、141-179日とのことです。
頑張っても、1年生存率は10%未満という厳しいものなのです。
脾臓以外の臓器、肝臓や心臓の血管肉腫もほぼ同じそう。

真皮血管肉腫で真皮下への浸潤なしの外科切除であれば平均余命は780日、皮下織や筋肉の血管肉腫なら172日、皮下織・筋肉への浸潤がある場合の平均余命は307日となっているそうです。

4.膀胱腫瘍

ワンちゃんでは、膀胱の内側にある粘膜の細胞がガンになってしまう「移行上皮癌」が膀胱ガンでは多くみられるようです。
膀胱ガンになると血尿や頻尿などの症状が見られ、膀胱炎と診断されることも。
膀胱炎の治療をしても治らず、精密検査で腫瘍が発見されることもよくあるそう。

女の子に多く発生し、犬種ではスコティッシュテリア、ビーグル、シェットランドシープドッグなどで見られるそうです。
膀胱ガンになりやすくなってしまう原因としては、肥満や除草剤や殺虫剤などへの曝露ともいわれているので、肥満気味の女の子は気を付けたいですね。
膀胱の腫瘍は進行して腫瘍が大きくなると、おしっこが出なくなることがあるとのことです。

<症状>
膀胱ガンになると、膀胱炎と同じように頻尿、血尿、排尿困難といった症状が現れますので、気が付かれると思います。
治療は外科的にガンを切除し、放射線や化学療法を行います。
外科手術で膀胱部分を切除した場合、平均余命は86~142日で、1年生存率は54.5%となっているそうです。
もちろん、予後はガンの状態によって変わってきます。

5.骨肉腫

ワンちゃんの中で、骨のガンといえば一番多いのが骨肉腫だそうで、骨格系に発生するガンの8割以上を占めているのだそうです。
発症年齢としては、平均7歳前後で発症するようですが、18か月~24か月の子に発生することもあるそう。

また、ワンちゃんの場合では体重40㎏以上の大型犬がかかりやすく、とくに発症のリスクが高いのはロットワイラー、グレート・デン、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーといった犬種だそうです。

わずかの差ではありますが、雌よりも雄での発生が多いという報告があります。
部位別では、背骨のほか7割以上が足で、特に前足は後ろ足の2倍の発生率ということがわかっています。
他には顎や頭蓋骨、肋骨などに発生します。
骨肉腫はガンが浸潤してしまうことが多く、また早い時期に肺や骨などへの遠隔転移が発生してしまうのも特徴。
ガンで骨が破壊されるので、痛みや発熱が見られたり、骨折もしやすくなっています。

<症状>
骨肉腫は激痛を伴うことが多く、足の腫れのほか歩き方がおかしくなったり、片足を引きずったりといった症状がみられます。
また、背骨に骨肉腫ができていると、麻痺がでることも!
原因は不明ですが、かかりやすい犬種があることから遺伝的なこともあるかもしれないといわれています。

6.その他のガン

上記以外にワンちゃんがかかるガンとしては、皮膚や乳腺のガン、肺がん、消化器系のガン、肝臓ガン、腎臓がん、関節内のガン、脳腫瘍や脊髄腫瘍、末梢神経のガン、白血病などもあります。

動物病院を受診する目安は?

体の表面にあるガンは、腫れやしこりがあるためシャンプーの際などに飼い主さんも見つけやすいのですが、体の中のガンは目に見えないため、飼い主さんが気を付けて見極めてあげなくてはなりません。

体の表面にあるガンで病院を受診するかどうかの決め手となるのは、まずはしこりの大きさが1㎝以上あるかないか、しこりがどの程度の期間あるのか、形はどうか、しこりの周りの毛が抜けて赤くなっているといったことがみられないかが判断基準になります。

内部にガンができているかの目安としては、食欲がなくなったり、元気がなかったり、嘔吐下痢といった症状が出ている、痩せてきた、血尿、血便が出ている、体のどこからか出血があるといった症状がみられたら、受診しましょう。

例えば、1か月以上しこりがみられ、さらに徐々に大きくなっていたら、必ず動物病院へ行ってください。

ワンちゃんがガンにならないためにできることとは?

ワンちゃんがガンにならないために私たちにできることは、どんなことがあるのでしょうか?
まずは、ワンちゃんがガンにかかってしまう理由がわかればよいですよね。
もちろん、「これのせいでガンになった」というように、原因の究明は難しいのですが、例えば人間同様、ガン家系なるものが存在し、他の家系に比べるとガンになることが多い家系の子もいるそうです。
また、若いワンちゃんよりは高齢のワンちゃんの方がガンにかかりやすいこともわかっています。

そのほかいわれているのが、乳ガンや前立腺ガンはワンちゃんがまだ小さいときに卵巣を摘出したり、去勢することで、発症する可能性が大幅に減ることがわかっています。
ということは、性ホルモンが関係しているなとわかりますよね。

また、運動不足や食生活が原因の肥満からガンにかかることも要因と考えられています。
それでは、飼い主さんができることでガンを予防することができることは、どのようなことがあるのでしょうか?

飼い主さんがやるべきガン予防はこれだ!

散歩で運動不足の解消!

ワンちゃんは運動不足や食生活の乱れで肥満になりますが、肥満になると病気を呼び寄せてしまいますよね。
肥満の予防としては、毎日ご飯の前にしっかり散歩など運動をさせ、食事前にお水を与えてあげるのが良いらしいですよ!

ストレスフリーな生活!

ガンにはストレスがいけない、ということはよくご存じかと思いますが、ワンちゃんがガンにならないためには、ストレスフリーな生活がカギです。

ワンちゃんは飼い主さんとの時間を大切に考えているので、いつもお留守番しているワンちゃんは実はゴロゴロリラックスしているわけではなく、飼い主さんと一緒にいれないストレスも抱えているのです。

ワンちゃんが自分のしっぽをしきりに追いかけていたり、自分の足をずっと舐めていたり、また自分のしっぽを噛んだり、飼い主さんが触ろうとすると嫌がったりといった姿がみられたら、かなりストレスが溜まっていると考えられるとのこと。
ストレスのサインを見逃さないようにしたいですね。

健康的な食生活

ワンちゃんの食生活も、ガンのリスクを上げてしまう要因になりえます。
ペットフードは便利ですが、酸化防止剤などが入っているペットフードはガンになりやすい成分ともいわれているので、避けてあげたいものですね。

また、かわいいからと言ってワンちゃんが欲しがるだけ食べ物を与えてしまったり、人間の食べているものをおすそ分けしてあげるなども、肥満の原因になります。

私たちがおいしく感じるものは、もちろんワンちゃんもおいしいと感じるでしょうが、同じものを食べているとワンちゃんのためにはならなかったりするわけなんですね。
ワンちゃんにとって、ワンちゃんの体に良い食べ物を与えてあげましょう。

遺伝

ワンちゃんの場合も、ガン家系なるものが存在します。
例えば、親がガンになった場合は、子供もガンになりやすい体質と考えてよいわけです。
特に、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーなどの大型犬は、ガンになりやすいといわれているので、その子のお父さん犬またはお母さん犬がガンということがわかったら、早いうちから気を付けてあげたほうが良いでしょう。

終わりに

ワンちゃんがガンにかからないようにするためには、健康的な生活をおくらせてあげることが一番。
適度な運動、ストレスを与えないように飼い主さんがかまってあげる時間も意識して大切にする、体に良い食生活。

これが、私たち人間が愛犬にしてあげられることなのです。
それでも運悪くガンになってしまうこともありますが、何よりも早期発見早期治療で、ワンちゃんの寿命は延ばすことができます。

ワンちゃんは人間の言葉を話せない分、飼い主さんはいつものシャンプーやブラッシングの際には、しこりなどがないか気にかけてあげてくださいね。
また、ちょっと体調が悪そうだなと思ったら、ぜひ早めに掛かりつけの獣医さんに連絡してください。

●参照
がんになる原因

【獣医師監修】犬のがんの早期発見チェック項目と、原因・対処法を解説

犬も「がん」になるの? 症状や治療法について